「がん(癌)のリハビリテーション」と聞いて、皆さんはどのようなことをイメージしますか?
ケアマネジャーさん、ご家族様からは、『がんになってもリハビリはできるのかなぁ?』『がんのリハビリって、どういうことをするんだろう?』と疑問の声をいただくことがあります。
上記のように、『がんになるとリハビリはできないのではないか?』このような認識をもたれる方も多いと思いますが、リハビリは運動機能の維持向上やADLの維持向上だけを目的に実施するものではありません。
では、どのような関わりが可能になるのか?
今回のブログでは、がんのリハビリテーションについて説明をさせていただきます。
がん(癌)に罹患すると生じやすい症状
【身体症状】全身倦怠感・食欲不振・身体の痛み・便秘・不眠・呼吸困難・浮腫・嚥下困難など
【精神症状】いらだち・不穏・不安・混乱・さびしさ・認知症症状の出現など
このような症状が一般的に起こるとされています。
がん(癌)のリハビリテーションの原則
それらを踏まえ、がんのリハビリテーションの原則として、下記のことが挙げられます。
- ご本人様の希望に沿っていること
- 身体に負担を与えすぎず、本人のペースや方法を尊重すること
- 現状の心身機能をなるべく維持し、その人が送りたい生活をできるだけ長く送れるようにする
- 体調に合わせて、身体に無理のない生活指導・環境設定・ご家族への介助指導を行う
- 安全、安心に過ごせるようリスクを回避すること
- ご本人・ご家族の不安に寄り添う
特に筆者が介入する際は、「ご本人様の身体面・精神面に負担を与えすぎないこと」・「ご家族様の負担を減らすこと」を意識して介入させていただいております。
前述の通り、身体症状として全身倦怠感や痛みを訴える方は多いです。リハビリを行うことにより、それらの症状が緩和することがありますが、想像以上に心身への疲労感が強く残ってしまうこともあるため、リハビリがかえって逆効果にならないよう心身への負担に関しては最大限の注意を払って介入しております。
また、一緒に生活されるご家族様としても、在宅療養・介護など初めてのことばかりで不安も多く、慣れない介護生活で疲弊されることもあるため、主介助者であるご家族様に負担が少ないような介助指導や福祉用具の提案をさせていただき、ご本人様・ご家族様の心身のストレスを減らすことが出来るよう心がけております。
関係各所(医師、訪問看護、訪問介護、薬剤師、ケアマネジャー、福祉用具業者など)の皆様への情報共有もさせていただき、より良い医療が提供出来るよう支援致します。ご家族様の負担を減らすことが、ご本人様の意志を尊重することにも繋がると筆者は信じております。
がん(癌)のリハビリテーションの具体的な内容や効果
具体的な内容
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拘縮予防でのストレッチ
ベッド上で過ごす時間が長くなるため、身体の関節が固まることを防ぐ目的で全身のストレッチやマッサージを行います。 -
疼痛緩和でのリラクゼーション
身体の痛みがある部分に対して、ストレッチやマッサージを行います。 -
呼吸リハビリテーション(胸郭のストレッチ、呼吸筋の訓練、呼吸法の獲得など)
ベッドでの生活が主体になると心肺機能が低下し、些細なことで疲れたり、息切れを起こしたりします。呼吸器機能を維持・向上出来るよう、肺が広がりやすいよう胸郭のストレッチや深呼吸などで呼吸をする筋肉の運動を行ったりします。 -
褥瘡予防でのポジショニング
ベッド上での生活が主体になると皮膚が褥瘡(床ずれ)を起こすことがあります。皮膚状態を正常に保つ目的で、クッションをどの位置に入れるのか、どの姿勢を取ると良いのか・悪いのかなどを提案させて頂きます。
皮膚トラブルとしては、高頻度で起きやすい問題であり、一度褥瘡が発生すると痛みや不快感がありご本人様のQOL(QualityOfLife:生活の質)を落とし、ご家族様の介護負担を増やすことになりやすい症状です。発生すると治るまでに時間を要すため、予防をすることが非常に大切です。 -
口腔ケア
食事や水分摂取を行う際に、口腔内の機能を維持することは非常に大切です。口腔内を清潔に保つことで、誤嚥性肺炎を予防し二次的な疾患を防ぐ効果があります。
最期まで経口摂取(口から食事や水分を摂取すること)を行うことがご本人様のQOLを保つことにも繋がります。
基本的には、訪問歯科・言語聴覚士に専門的なケアを依頼することが大切ですが、理学療法・作業療法で行える範囲での口腔周辺のマッサージや簡単な口腔・舌の運動を行うことも出来ます。食事を摂取しやすい姿勢や介助方法などを提案することも出来ます。 -
低負荷の筋力トレーニング
身体の調子が良い時は、軽い運動を行うことで心身機能・心肺機能を鍛えることが出来ます。軽く身体を動かすことで精神的にもスッキリすることもあり、負担がかからない程度で立ち座りや歩行訓練、座位で出来る運動などをバイタルを測定しつつ実施いたします。 -
在宅生活を安心・安全に送るための環境設定・福祉用具の調整やご家族に対しての介助方法指導
日々の体調に変化があり、心身機能や普段の身の周りのこと(食事、排泄、入浴、更衣など)で介助を必要とする割合にも変化が生じます。ご家族が介護を行う際、効果的な福祉用具の提案や介助方法の指導などをアドバイスさせていただきます。 -
精神的な不安を軽減するためにコミュニケーション・フリートーク
在宅療養では、自宅内で過ごすことが多くなり、家族以外と話す機会も減ってきます。ご家族には言えないような心身のお悩みに関する相談や他愛もない会話をすることでも気分転換となり精神的にスッキリとする場合もあります。
また、会話をすることで口腔内の機能を使うことになり、嚥下機能の維持・向上に繋がることもあります。ご家族様としても介護をする上でのお悩みや不安がある場合はご相談ください。介助指導や福祉用具の提案などをさせていただきます。 -
復職や外出などに向けて環境調整を含めた支援
復職を検討している・復職が可能な場合は、在宅ワークを行う際の環境設定や注意点の助言、外出時の注意点や介助指導などを行います。その日の体調に問題が無ければ、車椅子に乗って近所の散歩や買物などをすること等も可能です。 -
関係各所への情報共有
日々刻々と変化する体調を各医療機関と情報共有を行い、適宜迅速な対応が取れるよう支援致します。 -
ご本人の希望に添った作業活動の提供
最期まで自分らしく生きていくことを支援するとともに作業を通じて家族や遺族の心のケアに取り組まさせていただきます。
例えば、「出来る限り自分でトイレを済ませたい」というご希望がある場合、どのようにすれば一人で安全にトイレ動作を行えるようになるか、手すりの設置やポータブルトイレの設置、安全なトイレ動作が行える方法を考えます。
「料理を作りたい」というご希望があれば、一緒に献立を考え、実施手順やご本人が満足できる支援をさせていただきます。
がん(癌)のリハビリテーションはいつまで行うべきなのか?
リハビリテーションは、予防期・急性期・回復期・生活期・終末期の全てが支援の対象です。
そのため、ご本人・ご家族様が希望し、リハビリテーションがQOL(Quality Of Life:生活の質)に貢献できる場合は、亡くなる直前まで介入するケースもあります。
もちろん、途中でリハビリを終了するということも問題ありません。「一度終了したけど、また再開したい」という場合にも対応させていただきます。
つまり、がんだから、なってしまったからリハビリができないということはなく、継続することはもちろん、ご本人・ご家族様の要望に応じて対応することが可能ということになります。
まとめ
がんのリハビリテーションは、対象者に合わせて無理のない範囲で、身体症状・精神症状に対する様々なお困りごとを解決出来る効果が期待できます。
「最期まで自分らしく生きること」を前提に患者様、ご家族様の双方に対して関係各所と連携しながら支援をさせて頂きます。
繰り返しになりますが、リハビリテーションは、予防期〜終末期まで全てが支援の対象です。がんのリハビリテーションでは、訪問診療が介入しているケースが殆どです。訪問診療のサポートに加えて、訪問リハビリテーションを行うことでより在宅生活を満足いただけるよう当院では支援させていただきます。
ご本人・ご家族様の希望に寄り添い、
そのひとの そのときを その場所で
過ごせるよう、リハビリテーションを通じて、できる最大限の支援をさせていただきます。
個々によって様々なお困りごとがあるかと思います。みずほ在宅医療では訪問診療に加えて、訪問リハビリテーションという選択肢もあります。まずはご相談だけでもお問い合わせをいただければ幸いです。
それでは、最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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