作業療法士とは?法律や仕事内容まで詳しく説明します

作業療法士とは

以前に、理学療法士とは?リハビリテーションとは?といった記事を公開しました。

リハビリテーション職種には、理学療法士以外に作業療法士・言語聴覚士という職種があります。

今回、この記事では「作業療法士」にフォーカスをあてて、作業療法士とは一体どんな仕事をするのか、法律までを含んでご紹介していきます。

【関連記事】
理学療法士とは?法律や仕事内容まで詳しく説明します
リハビリテーションとは?世界保健機関(WHO)が定める定義を含めて簡単に説明します

作業療法士とは

作業療法とは

作業療法士(Occupational Therapist:OT)とはどんな職種なのか説明させて頂きます。

作業療法士によるリハビリテーション(作業療法)を知ることで、適切なリハビリテーションを受けることができ、ご利用者様・ご家族様の希望に近づくことができます。

作業療法士とは、どんな職種なのか・何ができるのか・どのような方が対象になるのか・どんな仕事をするのか、説明させていただきます。

作業療法の定義

以下、日本作業療法士協会からの作業療法の定義の引用です。

作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。

(註釈)
・作業療法は「人は作業を通して健康や幸福になる」という基本理念と学術的根拠に基づいて行われる。
・作業療法の対象となる人々とは、身体、精神、発達、高齢期の障害や、環境への不適応により、日々の作業に困難が生じている、またはそれが予測される人や集団を指す。
・作業には、日常生活活動、家事、仕事、趣味、遊び、対人交流、休養など、人が営む生活行為と、それを行うのに必要な心身の活動が含まれる。
・作業には、人々ができるようになりたいこと、できる必要があること、できることが期待されていることなど、個別的な目的や価値が含まれる。
・作業に焦点を当てた実践には、心身機能の回復、維持、あるいは低下を予防する手段としての作業の利用と、その作業自体を練習し、できるようにしていくという目的としての作業の利用、およびこれらを達成するための環境への働きかけが含まれる。

引用:日本作業療法士協会

作業療法士は、作業に焦点に当てて心身機能(心と身体の両面)の改善を図るスペシャリストです。作業とは、日常生活に関わるすべての諸活動であり、セルフケア(身の回りのこと)・家事・仕事・余暇・地域活動などが挙げられます。

作業療法士の強み

その人らしい生活を維持するために必要な能力を三つあげるとすると、

  1. 基本的動作能力(運動・感覚、精神・認知機能などの心身機能)
  2. 応用的動作能力(食事・トイレ・家事などの日常で必要な活動)
  3. 社会的動作能力(地域活動への参加、就労・就学など)

となります。

作業療法士はこれらのうち、全てにアプローチすることができますが、上記のうち応用的・社会的動作能力をより伸ばすことに特化している職種だと言えます。

理学療法士が基本的な動作に特化していることに対し、作業療法士は応用的な動作や自宅復帰・社会復帰に向けた支援を行うことが多いです。

訪問リハビリテーションにおいて、理学療法士の基本動作能力の向上に加えて作業療法士による応用動作・社会的動作能力の向上を目的に介入する意義は大きいです。

また、理学療法士=足や歩行・作業療法士=手 というイメージを抱かれることも多いです。

理由として、作業療法士が介入する“作業”には手を用いる活動が多く、必然的に手に対するリハビリテーションを行う傾向にあるため、そのようなイメージを持たれることになった、という説があります。

理学療法士=足、作業療法士=手というイメージは、正解ではありませんが間違いでもありません。「手」以外にも作業療法が介入する範囲は広いですし、理学療法士が「手」をみることももちろんできます。

作業とは

作業とは 作業療法士

より具体的に「作業」について説明します。

日本作業療法士協会では、「作業とは対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。と定義されています。生活行為とは、日常生活活動、家事、仕事、趣味、遊び、対人交流、休養など、とされています。

日常生活活動は食事を食べる、トイレで用を足す、服を着替える、お風呂に入る、身だしなみを整える・・・など「セルフケア」と呼ばれる身の回りのことを言います。

家事:料理、掃除、洗濯、買い物、ゴミ出し・・・など

病気や怪我により、それまでできていた生活行為が出来なくなります。それぞれの障害の度合いや程度を細かく評価や検査をし、必要とされる生活行為に対してアプローチをすることが求められます。

例えば、職場復帰を目指す方が作業療法を行うとして、仕事内容が調理師かシステムエンジニアかによって、必要な作業が変わります。立ち仕事なのかデスクワークなのか、力強い握力が必要なのか指先の繊細な動きが必要なのか、コミュニケーション能力か文章構成能力か・・・など仕事内容によって求められる能力は変わります。

どんな“作業”が必要なのかを見極めて、リハビリテーションの中に取り入れることが作業療法には重要です。

同じ疾患でも人により症状は様々ですし、大切にしている作業は変わります。

身体だけでなく心にもアプローチをする作業療法士は、対象者が求めていることを「どうすればできるようになるか」「できるようになるにはどんな訓練が必要か」「できないところにはどんな道具を使えば良いか・どんな支援が必要か」ということを一緒に考え、試行錯誤することができます。

 

職種 普段の姿勢 必要な手の機能 必要な思考能力 リハビリの内容 提案できる自助具
調理師 立ち仕事 包丁操作 遂行機能能力(物事を計画立てて考える力:時間内に料理を完成させるなど) 立位のバランス訓練、包丁を想定した握力強化訓練・道具の操作訓練、ダブルタスク訓練(複数の物事を同時並行で進める練習)を経て→調理訓練 太い柄の包丁(握力が弱い場合)、くぎ付きまな板(片手で食材を切る場合)など
システム
エンジニア
デスクワーク パソコン操作 文章構成能力(パソコン操作で文章を作ったり、プログラミングを考えるなど) 座位姿勢の安定、疲労しない姿勢の定着、パソコンを想定した手指の巧緻動作訓練(細かい指の練習)、単語の語想起練習、空間構成能力の訓練を経て→パソコン操作訓練 音声入力のできるパソコン(細かい手入力が困難な場合)、手関節を固定する装具(手関節周囲に筋力低下がある場合)など

これは在宅生活でも同様であり、家の間取りや大きさは異なり、そこに住む方の症状にも差があります。それらを詳細に考慮し、ご自宅での生活を安心・安全に暮らすことができるようリハビリテーションの内容を対象となる方に合わせて介入することができます

作業療法の具体的な内容

身体機能だけでなく心・精神状態にもアプローチすることができることが作業療法の強みです。心の病気(統合失調症、気分障害、うつ病、ストレス関連障害、認知症、人格および行動障害など)に対しても作業療法の適応となります。

具体的にどのような疾患の方が対象になるのか

身体障害分野:脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)、脳・脊髄腫瘍、脊髄損傷、呼吸器疾患、多発性硬化症、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、末梢神経障害、骨折、切断、関節リウマチ、熱傷、廃用症候群など

精神障害分野:統合失調症、気分(感情)障害、神経症性障害、ストレス関連障害、アルコール依存症、認知症、人格および行動障害など

発達障害分野:脳性麻痺、脳形成不全、小頭症、水頭症、奇形症候群、二分脊椎、低酸素脳症、脳炎・脳炎・髄膜炎、知的障害(精神遅滞)、多動性障害、行為障害、学習障害など

高齢期:認知症、脳血管障害、骨折、骨関節障害、廃用症候群など

年齢に関係なく、日常生活に支援が必要な方に関わることが出来ます。

作業療法の具体的な内容

では、作業療法士がどのような内容のリハビリテーションを行うのかを説明します。

  • 日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living)訓練:食事、排泄、入浴、移動など身の回りのことを一人で行えるようにする練習
  • 手段的日常生活動作(IADL:Instrumental Activities of Daily Living)訓練:料理・洗濯・掃除などの家事動作、買い物、散歩、公共交通機関の利用、金銭管理・内服管理などより高次な日常生活の練習
  • 就労支援:復職支援や仕事上の注意点の指導・助言など 仕事に必要な能力を伸ばす訓練
  • 福祉用具の選定、使用訓練:対象者に合った福祉用具の提案や使用方法の練習
  • 住宅改修の提案、助言:家屋改修における手すり設置や段差解消などの改修案の提案・助言
  • 高次脳機能障害に対する訓練:症状に対して、プリント課題や代替手段の獲得、動作練習など
  • 自助具の作成:心身機能の問題から行えなくなった生活行為に対して、可能な限り自身で行えるように工夫された道具をその人に合わせて作成する(例:背中を掻くための孫の手、片手で身体を洗うループタオルなど)

リハビリテーションの内容は働いている職場・分野や対象となる疾病によっても異なります。上記はほんの一部です。

まとめ

  • 作業療法士は病気や怪我によって失われた心身機能(心と身体の両面)を“作業”を用いて改善させるスペシャリスト
  • 作業とは、日常生活動作を中心に、その人が必要であり価値のある生活行為をさす
  • 作業療法士は「手」だけではなく、生活全体を診ることができる

あくまでも私個人の意見となるのですが、「生きるために必要な支援をすること」が作業療法なのではないかと考えています。特に人の趣味嗜好は各個人によって異なるため、ある方には必要ない生活行為でも他の方にはとても重要な生活行為であることもあります。

みずほ在宅医療の訪問リハビリテーションでは、対象となる方やそのご家族のご希望に寄り添い、豊かな生活を送れるよう支援してまいります。

どうぞお気軽にお問い合わせください。

簡単ではありましたが、作業療法士について説明させていただきました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP