近年、医療の分野では多職種連携(チーム医療)が必要であると言われています。
どのような場面でなぜ多職種連携(チーム医療)が必要になるのかを説明させていただきます。
そして当院でのSlackを用いた多職種連携の取り組みをご紹介致します。
他職種連携(チーム医療)とは
「医療環境でお互いに・対等に連携して治療やケアに当たることで、患者中心の医療を実現しよう」という取り組みになります。
従来は医師が中心となり医療業務を形成していましたが、医師の下につくのではなく、それぞれの医療従事者がお互いにフィードバックをしながら医療提供を行うという最善の医療を施すための考え方となります。
近年は病院だけでなく、地域医療においてもチーム医療を実践する動きがすすんできています。
厚生労働省は、チーム医療を以下のように定義しています、
各医療スタッフの専門性を十分に活用して、患者・家族とともに質の高い医療を実現するためには、各医療スタッフがチームとして目的・情報を共有した上で、医師などによる包括的指示を活用し、各医療スタッフの専門性に積極的に委ねるとともに、医療スタッフ間の連携・補完を一層進めることが重要である。
引用:チーム医療の推進について-厚生労働省
チーム医療の利点
- 患者中心の医療を提供できる
- 専門職それぞれのスキルを発揮できる
- 情報共有の推進
- 疾病の早期発見、回復促進、重症化予防など医療・生活の質の向上
- 医療の効率性の向上による医療従事者の負担の軽減
- 医療の標準化・組織化を通じた医療安全の向上
つまり、それぞれの専門職が、より専門性を発揮できるように目的や情報を共有して質の高い医療行為を行うことができる仕組みが多職種連携・チーム医療です。
チーム医療の欠点
- 法的にはほとんどの医療行為が医師の指示の下でなければ行ってはいけないとされ、全体的な制度のみならず、各職種面での整備も追いついていないことが指摘されている。
では、次に多職種連携・チーム医療では具体的にどのようなことを意識しながら業務を行うのか説明致します。
他職種連携・チーム医療の具体的な業務内容
- 各専門職がお互いの特性を理解し、尊重し合うこと
- 医療スタッフ間の患者情報の共有と日常的なコミュニケーションを取り合うこと
- 手順書やプロトコールの作成により平常時の役割分担、緊急時の手順・責任者を明確化すること
- 地域横断的な取り組みとして、病院・診療所(医師)、歯科診療所(歯科医師)、訪問看護ステーション(看護師)、薬局(薬剤師)、保健所(保健師等)、介護保険事業所(ケアマネージャー)等が退院時カンファレンスに参加するなど、在宅医療・介護サービスにおける役割分担と連携を推進
特に在宅医療においては、様々な事業所の各専門職が一人の患者さん宅に伺うため、より密な情報共有が必要になります。些細なことでも情報を共有することで臨床のヒントになることもあり、質の高い医療を提供できることに繋がると考えます。
ターミナルケアなど複雑なケースでは、方向性や意思を統一することが必須であり、密な情報共有や顔の見える関係作りも大切です。
当院での取り組み
当院では、他事業所の方との多職種連携・チーム医療のために、「Slack(スラック)」というアプリを使用しています。
Slackとは、ビジネスコミュニケーションハブと位置づけられており、このアプリを利用し、招待をされた者同士でコミュニケーションを取ることができるツールです。基本的な操作は全て無料で使うことができます。
当院では、下の写真のように各患者さんについて、担当している医師・看護師・ケアマネージャー・介護士・薬剤師・リハビリスタッフ等が情報共有するためにそれぞれが書き込みをすることができます。
写真やデータを添付することもできるため、より詳細に・視覚的に情報共有することも可能です。
例えば、看護師が訪問している際、褥瘡の患部を写真で撮りSlackに載せることで、各担当者に一斉に周知することができます。具体的な対応策などを書き込めば、関係各所への連絡は不要です。また、その写真を医師が確認し、必要に応じてその場ですぐに処置などの指示を出すことも可能です。
書類などのデータを送付することも出来ます。
また、ダイレクトメッセージを用いれば、メールのように1対1で直接のやり取りをすることも可能です。
各担当者は、都合の良いタイミングで情報を確認することが出来るため、従来の電話やファックスを用いた方法よりストレスが少なく、より詳細な情報共有することができます。
報告・連絡・相談の手段を使い分ける目安
- 早急な報告・連絡が必要 → 電話
- 月に一回の定期的な報告 → ファックス
- 緊急性はあまり高くないけど、より詳細に定期的に報告したい → Slack
などと使い分けることで、業務効率を図ることができるだけでなく、生産性の向上が図られより質の高いサービスが提供することが可能となります。
■Slack活用のイメージ
情報を確認し、必要であればその場で指示を受けることも可能です。いつでも・どこでも必要な情報を確認することができることがSlackの特徴です。
電話による口頭でのやり取りでは、聞き逃したりすることもあり、ファックスでは紙を媒体にするため無くしてしまうことがあったりしませんか?
Slackでは、書き込みをある程度まで遡ることも可能なので、伝聞によるミスやファックスの所在がわからないなどのミスを減らすことが出来ます。
各チャンネルは、関係者以外は見ることが出来ないように管理者が設定するので、個人情報保護の観点からも安心です。第三者に情報が漏れないよう十分に配慮されています。
Slackを始めるには、以下の手順で行うことができます。
- 無料アプリであるSlackをダウンロードする
- メールアドレスをみずほ在宅医療担当者に伝える
- 担当者から送られてきた招待メールからアクセスし、簡単な情報を登録していただく
その後、各患者さんのチャンネルへの招待が届きます。担当してる患者さんのチャンネルのみ閲覧や投稿が可能になります。
まとめ
多職種連携についてまとめましたが、ご理解いただけましたでしょうか?
他職種連携を簡単にまとめると、以下の3点に凝縮されます。
- 質の高い医療・患者中心の医療を提供できる仕組み
- 多くの専門職が、専門性を発揮できる
- 医療の効率化により医療従事者の負担が減らせることができる
また、Slackについては以下の通りです。
- 写真やデータを添付することが出来るビジネスコミュニケーションツール
- いつでも、どこでも、どんな情報でも患者さんに対する詳細な情報を共有できる
- 人的ミス(伝聞ミス、ファックスを無くす等)を減らすことができる
Slackを活用して、他職種で積極的に連携を図ることでよりよいサービスを提供することができます。皆さんもSlackを活用してみてはいかがでしょうか?
それでは、最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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